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救国の聖女となったジャンヌは、以後、幸せに暮らしたか、というとさにあらず。こともあろうに、国王の重臣の妬みから敵軍に渡され、魔女裁判にかけられ、とうとう火あぶりの刑に処せられてしまいます。
ところが裁判の正当性は当初から疑われ、彼女の死後25年目になって、やっとやり直し裁判が開かれました。このとき、ジャンヌを幼少期から知るドンレミ村の人たちがこぞって証人として出廷し、証言をした記録が今日、克明に残されているそうです。
その結果、彼女、ジャンヌ・ダルクの歴史的名誉は回復され、その後、1920年には聖人に列せられています。
次の引用は、名誉回復裁判での村人の証言の一部です。

 

「ジャンヌは頻繁に喜んで教会に通いました。……父の家畜のめんどうを喜んでみていました。……喜んで告解に出かけ……喜んで糸を紡ぎ、家事をやり、収穫にでかけ、いろいろなしごとに没頭していました。……」

 

なんども繰り返される“喜んで”という言葉が印象的です。文句ひとついわなかったというのではなく、“喜んで”やった、というのです。そこに彼女の“こころ”が感じられ、人柄がしのばれます。
ここで“喜んで”と訳されている言葉、原語では“ヴォロンティエ(volontiers)”。まさにボランティアの精神そのものです。彼女は、せざるをえない仕事、義務的に果たすべきことまでも、喜びのこころで、ボランティアの仕事に変えてしまったのです。
自由と喜びをもって“ボランティアのこころ”を輝かせ、まわりの人々を愛と信頼の輪へと招き人れたジャンヌ。

 

 

 

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